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Lee-Byung-hun addicted

Lee-Byung-hun addicted

第2話

コタツにみかん 第二話

「揺、こたつ、こたつ、あったかいよこれ。 最高だね。」
揺が下に降りていった時には彼は既に靴下まで脱いで裸足で居間のこたつにもぐりこんでいた。
「ビョンホン君ホント寒がりだね~。ほらこたつにみかん」
不二子が笑いながら菓子盆にみかんを山のように載せてこたつの上に置いた。
「わ~こたつにみかんこたつにみかん」
ビョンホンが嬉しそうに言った。
「いったい・・・君はいくつなの。」
脱ぎ散らかした彼の靴下を拾って丸めながら呆れて問いかける揺に
「え?36」
真顔で答えた彼はみかんを器用に剥いた。
そして丸ごと口の中に放り込む。
みかんを丸ごとほおばる彼と彼の横で首を振る揺をトメと不二子はゲラゲラと笑って見ている。
「くだらないバラエティー見てるより面白いわ。」
トメがみかんの筋をとりながら言った。
そして「はい」と彼に手渡す。
「コマスムニダ」
彼はにっこり笑ってそういうとまたみかんを丸ごと口に放り込んだ。
「ほらほら面白いよ。あんたもやってみなさいよ。どんどん食べるから」
不二子にけしかけるトメ。
「あら、面白そうね。じゃ、もうひとつ・・・」
「おばあちゃんっ!不二子さんもっ!」とむきになる揺。
「あら、揺ちゃんたらむきになっちゃって。いいじゃない少し貸してくれても。」とトメ。
「そうじゃなくって。そんなに食べたらお腹壊しちゃうでしょ。」
「嫌だな。冗談だってば。もう・・・冗談も通じないんだから。あ~嫌だ嫌だ。全く恋すると冗談も通じなくなっちゃうのかしら、ねえ、おばあちゃん。」
不二子がそう言っている間にトメはまた皮を剥いたみかんをビョンホンに渡していた。
「おばあちゃん!」
「だって・・・面白いんだもの」とトメが口を尖らせて答えた。
ビョンホンはわかっているのかいないのか嬉しそうにみかんをほおばってテレビのバラエティー番組を見て笑っている。
「もう・・・」
揺はそんな彼をみて苦笑いした。
ゲラゲラと笑う彼を見ながら何故だか揺は急に胸がきゅっと痛くなる。
彼女はその瞬間、彼を思いっきり温めて抱きしめてあげたいと思った。
「ビョンホンssi・・お風呂入るよ!」
彼女は突然そういうとこたつでみかんをほおばっていた彼の手を自分でも驚くほど強引に引っ張った。
「え~~っ!」
驚く一同。
「揺ちゃん。どうしたの。急に大胆になっちゃって。何か悪いものでも食べた?」
不二子が心配そうに言った。
「嫌だな。そんなんじゃないですよ。ただ・・そうしたいだけです。ほら。行こう」
ビョンホンはみかんをほおばったままちょっと戸惑って照れながら揺にひきづられて部屋を後にした。
「おばあちゃん・・どうしたんだろ。揺ちゃん」と不二子。
「あれ、今日は不二子ちゃん珍しく察しが悪いね。温めてあげないと冷凍みかんになっちゃうからね。」
トメはそういうとまたみかんを手に取った。


「どうしたの?揺」
ビョンホンが心配そうに訊ねる。
「どうしもしないよ。ただ・・お風呂に入りたかっただけ。」
揺はそういうと脱衣所で潔くセーターを脱ぎだした。
「ね。本当に今二人で入るの?みんなそこにいて起きてるのに・・・」
ビョンホンが慌てたように訊ねる。
「うん。いけない?」
「いけなきゃないけど・・・恥ずかしくない?」
「別に。それより今はあなたとあったまることが大切なの」
揺はいつのまにか生まれたままの姿になっていた。
「ほら、早く・・あなたも脱いで」
揺はそういうと彼のシャツに手をかけた。
「え?」
「何?」
「揺が脱がしてくれるのなんて初めてだから・・」
彼がちょっと照れて恥ずかしそうに言った。
「何、甘えてるの。だったら自分で脱ぎなさいよ。」
揺は口をちょっととがらせて呆れたようにそう言い放つと一人さっさとお風呂場に入った。
「ちょっと待ってよ。揺・・」
一人取り残された彼は慌ててシャツを脱ぎ始めた。


「やっぱ温まるわよね~。あ・・背中洗ってあげるよ。ほら」
そういうと揺は湯船からすっくと上がり彼の後ろに座った。
そして石鹸をたっぷりつけたタオルでゴシゴシと大きな背中をこする。
「揺・・・ありがとう」
「ん? 気持ちいい? 背中は自分じゃ見れないからね。いつでも私がこうやって見ていてあげる。・・で垢がたまってたらこうやってゴシゴシ洗ってあげるから。」
揺はそういいながら彼の背中を一生懸命こすった。
彼の大きな背中・・・この背中にどれだけ多くのものを背負って歩いているんだろう。
考えただけで気が遠くなる。
(私は何もしてあげられない。だから一緒にいて温めてあげるからね。ビョンホンssi)
揺はいたたまれなくなって彼の背中をそっと抱きしめた。
「揺・・・おっぱいが当たってくすぐったい」
ビョンホンはそう言ってゲラゲラと笑った。
「もう・・・バカっ!」
揺は彼の泡だらけの背中を思いっきり叩いた。
「痛いっ!」
彼の叫び声がお風呂にこだました。

「いったい・・・何やってるのかしら・・・」不二子がつぶやく。
居間のテレビは何故か消えていた。
柱時計の音が響く。
「さあ・・・痛いことって・・・何かね」トメがお茶をすすった。
「もう・・・揺ちゃんたら」
二人は声を合わせてそういうとヘラヘラと笑った。
「さ、邪魔者はさっさと寝ようかね」
トメはメガネをはずすと微笑んでそうつぶやいた。




「ずいぶん短く切ったのね・・・」
揺は彼の髪を優しく撫でていた。彼は揺の胸に抱かれ目をそっと閉じている。
「うん・・・禿げそうだって彼女に言われたから。短くしたら栄養が行き渡るかと思って」
「もう・・・冗談だって言ったじゃない。大丈夫よ。今のところ。意外に丈夫そうだわ。あなたの髪の毛。それから・・・・・」
「それから?」
「それから・・・・他のところも。」
「どこ?他のところって」彼は上目遣いに彼女の顔を覗き込む。
「例えば・・・・こことか」
彼のことが正直心配だった揺はそっと彼の胸をつついた。
「心臓?そりゃ陸上トラック全力疾走10周は軽くいけるけど・・もう揺ったら・・いやらしいなぁ~」
彼は嬉しそうに笑うと揺に覆いかぶさった。
「そうじゃなくて。ここ。ハートよ。ハート」
慌てて遮る揺。
「だから大丈夫だって。心臓は丈夫だから」
彼は彼女の首筋にそっと唇を這わせる。
「だから臓器じゃなくて心。」
彼の口づけを敏感に感じながらも必死に抵抗する揺。
「心?」彼の動きがふと止まる。
「そう。心よ。大丈夫?」
ビョンホンは揺の真剣な表情を見てそれが映画の興行成績の不振のこと意味していることに気がついた。
「何だ・・・それで今日はサービス満点だったのか」
そういうと彼は優しく微笑んだ。
「ほら、おいで」
そういうと彼はいつものように彼女の頭を逞しい腕の上に乗せて優しく彼女の髪を撫でた。
「そっかぁ~心配かけちゃったか。」
そうつぶやくと彼は揺の額にそっと口づけをした。
「私の心配なんてとるに足らないから。何もしてあげられないし。それより大丈夫?」
「ん?大丈夫さ。そんなこといちいち気にしてたら気に入った映画なんか作れないさ。でも・・もしかしたらどこかで気にしてたから無性に君に会いたくなって抱きしめたくなってわざわざ日本まで飛んできたのかもしれないな・・・」
そうつぶやく彼の眼は天井を抜け遠くを見ているように揺には思えた。
そしてたまらなく彼を抱きしめたくなった。
「ほら、私の胸貸してあげるから・・気が済むまでお泣き。」
揺はわざとふざけたように言って彼をそっと自分の胸で包んだ。
「小さすぎて泣けない・・」
揺の小さな胸の中で彼が笑いながら言った。
「もう・・ひどいっ!」怒って背中を向けた揺を彼が優しく包む。
「ありがとう・・・揺・・一緒にいてくれて。すごく温かいよ」
その声は今さっきふざけていた時の声とは明らかに違った。
揺はそんな彼を背中に感じながら返す言葉を選んでいた。
そして一言。
「ありがとう・・・・」と。
「え?」
「ん?ありがとうって言ってくれたから。ありがとう。ビョンホンssi・・」
「揺・・・」
彼はそういうと飛び切りの笑顔で微笑み、揺をぎゅっと抱きしめる。
窓からは細い三日月の頼りなげな月かりが差し込む。
やわらかく温かい夜が二人を包んでいた。


「揺・・・明日何しようか。一日中こうしているのも悪くないけど・・。」
揺を抱きしめたまま彼がつぶやいた。
「あ。いやだ。どうしよう・・明日私アルバイト頼まれちゃってたのよ・・・。どうしよう・・・・・。そうだ。いいこと思いついた。ね、ビョンホンssi明日はタクシードライバーよりもっと安全ですっごく楽しい経験させてあげるから。あ~ワクワクしてきた。さ、早いからもう寝よう。」
背中を向けてさっさとフトンをかぶる揺。
「ちょっと揺、まだ寝ちゃだめだよ。これからがいいところなのに・・」
慌てる彼を尻目に揺は布団の中で笑いながら舌を出していた。

「また朝までかい・・若いってすごいね」
眠そうに2階から降りてきた二人を見てトメは笑いながらそう声をかけた。
気まずそうにお互いの顔をチラッと見て咳払いする二人。
「ほら、運動の後はお腹もすくし。ご飯お代わりいっぱいあるから。」
不二子がニヤニヤ笑っている。
早く食べて出かけないとずっとからかわれそうだ・・
隣でビョンホンは上機嫌でご飯をほおばっている。
揺はそんな彼を見てふっと笑った。
「さ、急ごう」揺は慌ててご飯を口に運んだ。






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